2011年06月09日

親父の犬だろ、かーちゃん代わりに行けよ

35名前:[]投稿日:2009/10/16(金)00:58:05.11
父親が犬を貰ってきた
しかしまもなくおやじは単身赴任で北海道へ
面倒臭がり屋の俺はろくすっぽ世話をしなかった
母親が
「散歩に連れて行ってあげなさい」
と言うと、親父の犬だろ、かーちゃん代わりに行けよ
と動物嫌いの母親にまかせっきりだった
それでもたまには散歩に連れて行った
ろくに躾もしなかったのでの他の犬にからむは、興奮すると
飼い主噛むわで、相変わらずであまり奴に愛情はなかった
8年の月日がたった
ある日奴の様子がおかしいので、母親と一緒に病院へ連れて行った
「フィラリアです」
どーでもいいから早く治してやってくれよ
「手術をしても一時的に良くなるだけです。
このままで最後を迎えるかどうかは、飼い主さんの判断に任せます。」
は?最後って何?
奴はそのまま入院、手術となった
家に戻って電話で父親に報告した
「二週間後、そっちに戻るから、それまで生きていてくれれば・・・。」
二週間?そんなにすぐ死んじゃうのか?
手術後、奴を迎えに病院へ行った
俺の顔を見るなり、寝そべっていた奴は起き上がり尻尾を振った
「器官に虫がつまり、呼吸困難になっていたので
喉を切開してこれだけの虫を除去しました。」
なんだこれは、こんなのが体の中にいたのか
首に包帯を巻いた奴は、自宅に戻ると嬉しそうにはしゃいでいた
「僕、手術したんだ。今は傷口痛いけど、もう大丈夫。
呼吸できるし、だるくないし、早くまた散歩に行きたいよ。」
奴が散歩に行ける事はなかった。
手術後、一瞬調子が良く見えたのもつかの間
数日後には、起き上がる事さえ出来なくなった
部屋の隅で毛布の上に横たわる奴に向かって母親は
「もうおしっことか垂れ流しで・・・」
と愚痴をこぼした
しかしそんな母親を責める資格は俺には無かった
俺が近づくと無理やり起き上がろうとするので
「いいよ、寝てろ」
と撫でてやると、しっぽをパタパタ振った
小さく切ったハムを口元へ運んでやるが、もう飲み込む力は残っていなかった
父親が帰ってくる二週間をまたずに、奴は逝った
俺も母親も仕事で留守だった
奴は部屋の片隅で一人ぼっちで死んでいった
昔は嫌いではなかったが、今は犬が大嫌いだ
こんな俺に尻尾を振るな
そんなに嬉しそうな顔をするな
もっと自分本位に生きろ
俺には動物を飼う資格なんか無い
どんなにくやんでも、もう、奴は帰ってこない

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